マスカスタマイゼーション時代における設計方法

2019/10/15

 以前のコラム(マスカスタマイゼーションに向けたモジュラーデザイン活用法 )では、『マスカスタマイゼーションに向けたモジュラーデザイン活用法』として、Tシャツを例に製品ラインアップ表の作成方法を紹介しました。製品ラインアップ表は主要な仕様を規定するのみであり、その他ものづくりに必要な寸法を規定していません。今回は、オーダーメードの進化となる3D測定したユーザ体型に応じたサイズバリエーションTシャツの各構成部品の寸法を決定する設計に着目して解説します。

■論理的な設計の必要性

顧客ニーズの多様化により製品のカスタム化に対応するには、従来の設計(流用設計)方法では、製品種類数が膨大に増え、つまり部品種類数、各寸法種類数も増えることとなります。そこで、マスカスタマイゼーションにより顧客要求を満たしつつ、部品種類数を最小化する為には、仕様のつながりと各部品間のインターフェースを予め規定しておくことが必要です。つまり、インプットとなる体型サイズから、論理的に設計することが必須になります。 以下では、Tシャツの中で、胴体パーツと袖パーツ部分をケースとして説明します。

1) 設計フローの作成

まずは、設計フローを概要レベルで下図のように見える化・整流化します。(図1参照)

図1:設計フロー(胴体と袖の接合)|エンジニアリングチェーンマネジメント/モジュラーデザイン研究会[ECM/MDI・PLM]

図1.設計フロー(胴体と袖の接合)


2) 設計手順書の作成

 上記で作成したフローの箱一つずつ詳細化して手順書化します。この手順書作成と同時に、ベテラン設計者のノウハウ(暗黙知)を形式知化していきます。 多くの企業で見られる設計標準書等のノウハウ書は、ワードやエクセルに文章ベースでノウハウが書かれているものが多いようです。さらに歴史ある企業では、手書きのノウハウ書がpdf化されて残っているケースもあります。ノウハウを見える化することは非常に重要ですが、この様なケースではたいてい使われておらず、非常にもったいない話です。では、組織に蓄積されたノウハウをどのような形式にして貯めるのが良いかとなると、どのように設計するかの情報(Know-How)は、設計手順書に書き替えます。そして、設計した根拠となる情報(Know-Why)は、設計手順書に紐づけた解説書として残す形が最良です。下図が、当研究会が推奨しているMD式設計手順書です。(図2参照)
この設計手順書フォーマットに従って書き下す際に、数式にできるものはエクセル関数を用いて数式として記述します。これにより論理的な設計が可能となります。

図2.MD式設計手順書フォーマット|エンジニアリングチェーンマネジメント/モジュラーデザイン研究会[ECM/MDI・PLM]

図2. MD式設計手順書フォーマット


図1設計フローより「③袖パーツの幅・長さ寸法決定」をケースに
設計手順書へ書き下した例が下図です。(図3参照)


図3.MD式設計手順書の例|エンジニアリングチェーンマネジメント/モジュラーデザイン研究会[ECM/MDI・PLM]

図3. MD式設計手順書の例


3) モジュールテーブルの作成

図3の行番号20,30にあるように、『モジュールテーブル』を作成し、そこから寸法を選択し決定するという方法を取ることにより、寸法や標準部品を規定することが可能となります。 下図がモジュールテーブルの例です。ここでのポイントは、1寸法においてもモジュール数を適用することにより、寸法種類数の抑制が可能となります。(図4参照 ※本来は腕長さと袖パーツ長さも関係しますが、本表では割愛します。)また部品間のインターフェースとなる寸法へも同様にモジュールテーブルの設定とモジュール数の適用により、インターフェースが成立します。


図4.モジュールテーブル(袖パーツ)|エンジニアリングチェーンマネジメント/モジュラーデザイン研究会[ECM/MDI・PLM]

図4. モジュールテーブル(袖パーツ)


  また、本来であれば上記の寸法の決め方に、従来テーラーが採寸して決めていた際のナレッジ(フィット感や美しく見えるかなど)を加味することによって、設計手順書が完成します。

■設計製造連携

この設計手順書により決定した各寸法の情報をCAD、生産設備にインプットすることにより、オーダー~設計~生産の自動連携が可能となります。 大量生産時代に比べ、マスカスタマイゼーション時代になると設計も製造も複雑性が高まります。この際に生産側で有効となる考え方が『CPPS(Cyber Physical Production System)』です。 CPPSとは、サイバー空間とフィジカル空間を同期化することにより製造の全体最適を図るコンセプトです。「CPPSに関する詳細の解説はこちら」をご覧ください。

また10/28に開催の定期講演会では、日本機械学会CPPS研究分科会の幹事でありました
株式会社レクサー・リサーチ 中村様にご講演頂きますので、是非ご来場ください。
マスカスタマイゼーション時代には、ものづくり全体の考え方にモジュラーデザインを導入し、さらに生産側にCPPSを導入することが、実現に向けた有効な手段となります。


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