製品ライフサイクルとモジュラーデザイン

2020/4/27

 前回は製品イノベーションにモジュラーデザインが必要なことをお話ししました。その中で、モジュラーデザインの根幹である「製品モデル」がイノベーションを生み出す原点になると説明しました。今回は、市場要求から生み出された製品のライフサイクルにおける収益とモジュラーデザインの役割を考えてみます。

1.製品のライフサイクルにおける収益

製品イノベーションは市場の要求(VOC:Voice of Customers)に対する問いとその解決策から生まれますが、製品を生み出すためには相応の市場調査や技術開発や様々な規制への対応などの開発コストが必要です。市場への投入に際しては広告宣伝費、流通ルートの開拓などの経費が必要です。さらに、これまでなかったような製品の場合は、市場が受け入れるまでに越えるべき「死の谷」もあります。順調に販売が伸びていくと、お客様の新たな要求が生まれてきます。そこで製品に対する機能追加が求められますが、製品を変更することによるコスト増や品質の不安定をもたらすことがあります。やがて競合製品が出てきたり代替製品が生まれたりすることで、収益を生まなくなり製品寿命が終わります。このような製品のライフサイクルを開発からの経過時間と収益で描くと様々な形状が描けます。(図1)

 

図1:製品群の収益ライフサイクル|エンジニアリングチェーンマネジメント/モジュラーデザイン研究会[ECM/MDI・PLM]

図1.製品群の収益ライフサイクル

  • 製品群A:市場性はあるが、開発期間が長期化し競合も多く、品質が不安定で収益が上がらない
  • 製品群B:市場成長率が高く、利益も多いが競合が激しく常に投資が必要
  • 製品群C:自社の主力商品で、技術も成熟している。市場は伸びていないが高いシェアで収益は多い
  • 製群品D:特定のお客様のニーズで開発してきたが、売り上げも上がらず都度設計が頻発している
(注:経過時間は製品によって異なりますので、同一時間軸ではありません。)

2.製品群のライフサイクル分析と製品戦略

製品群の収益を製品のポートフォリオ(PPM:Product Portfolio Management)として、検討する期間の市場占有率と市場成長率で捉えてみると、「問題児」、「花形商品」、「金のなる木」、「負け犬」として分析できます。(図2:円の大きさは収益)
図2:製品群のPPM|エンジニアリングチェーンマネジメント/モジュラーデザイン研究会[ECM/MDI・PLM]

図2.製品群のPPM

製品ポートフォリオを分析したうえで、企業がとるべき戦略は「利益源追求の理論」によれば
  • ①「金のなる木」から得られる利益を「問題児」の製品開発に投入して「花形商品」に育てる
  • ②金食い虫の「花形商品」を次世代の「金の生る木」に育てる
  • ③現在の「金のなる木」は利益創出を引き延ばしつつ徐々に撤退する
  • ④「負け犬」は早期に撤退する
になります。
「実践エンジニアリング・チェーン・マネジメント」IoTで設計開発革新)日野三十四著
  日刊工業新聞社 序章を参照してください。)

3.「利益源追求の理論」を実現する戦術としてのモジュラーデザイン

「利益源追求の理論」の4つの戦略を実践するには; ③→②→① の順が良く、④は並行して進めます。では③、②、①の戦略を進める上での取り組み方と、その戦術としてモジュラーデザインとの関連を説明します。

・戦略③:「金のなる木」製品群は市場での表の競争力が高い製品です。この製品群は競争力をさらに高め、競合を市場から撤退させることで、より長く収益が出る事業として維持していくことが必要です。豊富な経験が蓄えられている事業ですので、その経験を体系化することで、収益だけではなく技術面でも他の事業への波及効果が期待できます。対応策としては、製品ラインナップをグロ―バルな市場に応じて見直し、マスカスタマイゼーションに転換し、さらなる市場占有率を高めることです。

・戦略②:「花形商品」製品群は市場の成長率は高く、市場占有率は高いものの、競合との差別化に投資が必要です。対応策としては、市場ニーズの動向や方向性を見極めて付加価値を高めることと、さらなるコスト削減や品質の安定性を高める必要があります。そのためには製品アーキテクチャーを見直し、製品を革新することが求められます。この変革に成功すれば、競争力を高め市場占有率の高い事業へと成長できます。

・戦略①:「問題児」は市場の成長率は高いのですが、多くの競合が競っている市場です。成長するには、自社の他の事業との相乗効果を含めて検討する必要があります。対応策としては、市場ニーズを見直し、製品を見直す所から始めます。製品のアーキテクチャーを見直し、コストや品質を再確認することが必要です。市場ターゲットを明確に定義することで、製品の市場占有率を高めることが可能になります。

「金のなる木」製品群でモジュラーデザインを実施し、収益を上げながら、そこで得られたモジュール化や製品情報の整備方法を「花形商品」や「問題児」へと展開することにより、人材の育成をはかりながら生産性を高めることによって、競争力をつけながら働き方を改革していくことが実現できます。

これらの戦略の対応策とモジュラーデザインの手法との関係とそこから生まれる成果を示します。(表1)
「利益追求の理論」→「対応策」→「対応策を実現するモジュラーデザインの手法」→「モジュラーデザインの手法を実践することで得られる成果」 と時計周りに確認できます。 手法と成果の関係は、具体的な説明が必要かと思います。詳しくは、ECM/MD研究会にお問い合わせください。
表1:PPM戦略とモジュラーデザインの適用|エンジニアリングチェーンマネジメント/モジュラーデザイン研究会[ECM/MDI・PLM]

表1:PPM戦略とモジュラーデザインの適用

自社の製品が製品のライフサイクルとしてどのあたりにあるかを分析し、PPMに応じた戦略にモジュラーデザインを適用することによって、製品を早期に「金のなる木」に育て上げ、長く収益を出すことが経営戦略として求められています。




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